こども哲学 実践WS(4)個性を進行にどう活かすか
2018年 09月 25日
9月18日(火)子ども哲学 実践ワークショップ(4)
開催しました♪
Vol.4 個性を進行にどう活かすか
講師・進行 安本志帆さん
参加者 8名
夏休みを挟んで久し振りの実践ワークショップ。
今日は「個性を進行にどう活かすか」ということで、
どうやったら自分なりの進行ができるのかと興味津々です。
まずは自己紹介も兼ねながら、今日のテーマについて思うことを話します。
このWSには進行役になりたいという方よりも、
自分の子育てに活かしたいと思われる方が多いので、
てつがく対話の進行ということだけにこだわらず、
広い意味での対話の進め方という点で、出てきた意見はこんな感じ。
―個性が活かせるんだ、という視点があるのに驚いた
―志帆さんの真似をしようとして失敗した経験がある
―進行役の経験がなくても、人としての佇まいが素敵な人は、安心感のある進行ができるような気がする
―今回のタイトルを見たときに、進行役の個性のことではなく、参加者の個性のことだと思った
―自分の個性がどういうものかがわからないと、活かせないもの
―進行をしようとしても、自分が考えることで精いっぱい
―進行という言葉は、「進む」と「行く」という漢字でできているけど、参加者の個性を活かすのに、進行する先を決めてしまっていると、個性を活かしきれないんじゃないか?
―子どもの個性を見る前に、自分の思いの方が強くでてしまう
―人の楽しさが見えることが、個性を見ることにつながるかも
―個性が強みになっている人は活かせるかもしれないけど、そうじゃない人には難しい
私や志帆さんのなかでは、今回の「個性を活かす」という視点は、
「進行役の」ということが前提にあったので、「
参加者の」個性という風にとらえた人が半数近くいたのには驚きでした。
対話のなかで違った視点が見えてくるということを改めて感じます。
参加者の個性を活かすという視点から、
保育の実践に基づいたこんな意見もでてきました。
―保育の現場で子どもの個性を使って場を盛り上げることができる。
でも、それだけだと、見えてこない個性を伸ばしてあげることができないかも。
それについて志帆さんからはこんな感想が。
―発言できる子の個性を使って場をまわすことができるのは、
経験に裏付けられたスキルであって、それは活かして使うべき。
でも、意見が言えることだけを必ずしも評価するわけではなく、
子どもには言いたくない子と、言いたいけど言えない子がいて、
言いたい子をひきあげてあげるのが進行役の一つの役割かもしれない。
声が出せそうなタイミングで保育者が言葉がけすることによって、
黙って隅の方にいる子どもから言葉がでてきて、
それをオフィシャルな意見にすることでその子の振れ幅が大きくなる。
人が変わったように、どんどん意見が言える子になることがある。
きらきらしているように見える目立つ子だけじゃなく、
いつもは地味な子にスポットがあたることで、その子への見方が変わることがある。
では、言いたいけど言えない子どもから言葉を引き出せるようになるのは、
どうすればよいのでしょう。そんな問いを抱えながら、
次は参加者のなかから進行役を募って「問いだし」のプロセスをやってみます。
まず、出てきた問いは、
Q 進行には何か道筋があって、対話には落としどころはある方がいいのか?
この問いについての質問です。
Q 進行という言葉には、何か「まとめる」というイメージがあるのですか?
―対話は場で作り上げていくものだから、進行役はまとめる必要はないと思っていたけど、進行役がいい質問をすると、対話が進むことがある。進行役は流れをサポートした方が拡散しなくていい。
進行役の役割として、こんなポイントが挙がってきました。
・まとめる
・いい質問をする
・流れをサポートする
それに対して、こんな意見も。
―進行役の意図が見えてしまうとつまらない
―進行役の哲学的な視点の質問が入ってくると場が面白くなることがある。
―哲学的な視点を知りたい。
―質問力のコツを知りたい。
Q 哲学的な視点というのは何? いい質問って何?
―本当に興味をもって聞いてくれている
―答えをすでに持っているような質問をされるとつまらない
―ただただ質問されるとすっとする
―参加者の話せる経験を引き出してくれるような進行役になりたい
―隅っこに居る子が言いたいことを言えるだけじゃなく、話していても本当ではないことを話している見せかけだけ会話はたくさんあって、自分の言葉を語りたい
Q 自分の気持ちと違う言葉を言っていることは自分ではわかっても、他人の気持ちをどうやってわかる?
―非言語的なところ。目線、手の動き、苦しそうだな、、、
Q 参加者の思いと言語が一致しないとき、進行役はその責任を引き受けるべきか?
―子どものときは考えてあげることは必要かもしれないが、大人相手の哲学カフェなどの場合は引き受けなくていいのでは。
―伝えたいと思っていることに対しては責任を持ってあげてもいいが、伝えようとしていないことについてまでは進行役が掘り下げて聴く必要はないかも。
―一致してなくても、進行役はそれを意見としてさばいていけばいいんじゃないか?
―進行役は自分の意見をいれない方がいい。参加者の意見を引き出す役。
―意見はいろんな人が違うとらえ方をするけど、みんなの意見を束ねてコントロールする力。前に志帆さんが言っていた、長いリードを見失わない程度にもっておくイメージ。
Q 哲学的な視点の問いであれば、コントロールにはならないのでは?
―哲学の定石、バックボーンがあると、こういう問いの後にはこういう流れがあることがわかる。知った方がもちろん深まることはあるのだけど、それが果たして、その場が自由になることか? 往々にして、それが邪魔することもある。
Q 哲学的視点とは何か? 哲学の知識があるから哲学的なのか?
ここで哲学科を卒業したという参加者の方からこんな話が。
―哲学科を卒業しても、哲学研究者になる人はいても、哲学者になる人はほとんどいない。プラトンの対話編でも、対話しながら話を深めていくということはあるけど、哲人は衆人を導こうとしている側面もある。
ここで志帆さんから以前の回の振り返り。
子ども哲学=子どもたち一人一人が哲学者。
研究者ではなく、哲学者。
自分でてつがくをする、「Doing philosophy」という動詞が重要。
哲学的=クリティカルな視点なのか?
哲学的な問いは自由なのか?
いい問いと悪い問いをジャッジしている時点で、それは場をコントロールしていることにはならないか?
哲学対話は「哲学」という名前がついていることもあって、
哲学を学んでないものにとっては、「哲学的視点」というものが、
何か大きなハードルのようなものとして立ちはだかっているように思えます。
そうした弱みをいかに乗り越えるかも一つの大きな課題です。
様々な問いが浮かび上がるなかで、
今日の本題、個性をどう進行に活かすのかに志帆さんの話はつながっていきます。
進行役は一人一人ちがう、対話の場も毎回違う生もの。
自分もコンディションのいい日もあればダメな日もある。
進行役とはこういうもの、というある程度の概念はあってもいいと思うけど、
他人の真似をしてもうまくいくとは限らない。
スキルと個性は別にあって、たとえば、クローゼットに赤い服、ドレス、カジュアルな服、スウェットが入っていて、それをチョイスして、今日はこういうモードでいこうと演じる感じがスキル。
個性は生身の身体のようなもので、それぞれ違う。
着た服を活かしきるためにはどうすればいいか?
Q 自分の弱みと強みのどちらを使うべきか?
―強み
―自分が自然体でいられる方を選ぶ
―弱みも強みになることがあるし、弱みか強みかがわからない
―自分の手に余るような仕事が来たときでも、弱みを全面に出して子どもたちと一緒に考える。弱みを強みにしている。
Q 自分の性格、個性を振り返って、自分が使えそうな弱みはないか?
―進行役をできる自信がないので、みんなでできる場にしよう、進行役がなくてもできる場にしようと考えている。
―絶対これ、という意見はないが、強みとしては人の意見も受け入れる、弱みとしては意見がないと思われる。強み、弱みとわけずに、両方もちつつ居ること。自分がそれを出せれば、絶対的な意見じゃなくてもいいんだということが場の人に伝わるかも。
―考えるのに時間がかかるのが弱みだけど、時間をかけるといいアイディアがでてくることがある。家庭での子どもとの対話にはあっているかも。
そうした弱みを出し合って、
それぞれが進行役をしている姿を思い浮かべているうちに、
―熟考するタイプの哲学対話もいいんじゃないか、
―自分の弱みに苦しくなることもあるけど、いろんな進行がある、
―自分とうまくいかない進行があっても、行先がたくさんあると思えるといいんじゃないか。
―手綱だけもっているということができれば、それも一つのスタイルとなる。
―いろんな人がいろんなことを聞きたいと思っていて、それができるのであれば、話がまとまらなくてもいいかなと思う。
などなど、進行役の色によっていろんな対話があって、
必ずしもどれがいいというわけではないということが実感されます。
―進行役=時間内に何かするということと考えているかもしれないけど、そうでもないかも。
―話がうまくいくことではなくて、どういう場を作りたいか。自分がどうありたいかという最終的なゴールを決めてやっていく。
―参加=自分がその場でできることを持ち寄ってできることをすること。結果を残すことではない。
―無理してやらない、自分の持ち味を活かしたファシリテートをやることが、いい場を作る原動力になるかなと思う。
まさに、みんなで対話をすることを通じて、
様々な意見に触れながら、
自分の考えを深めていく。
そんな深い深い哲学対話の時間となりました。
進行役についての対話によるWSを4回と続けてくるなかで、
明らかにみんなの思考は深まってきているように思います。
そして、新しい方が参加してくれることによって、
新たな風が注がれる。
対話をしながら、対話と進行について考える、
とても豊かな時間と場が生成しているように思います。
さて、次回は10月16日(火)開催となります。
テーマは「会話と対話の違いは何か」
みなさまのご参加お待ちしています。
(犬てつ ミナタニ)
by inutetsu
| 2018-09-25 15:05
| 「こども哲学」進行役 実践WS